就職活動で「専門性」と「社会性」のバランスをどう伝えるかに悩んでいませんか?
この記事では、理学部化学科出身の新卒学生が、化学メーカー大手・旭化成の面接を受けると仮定し、実際に問われそうな質問とその答え方をまとめました。
研究で得た知識や実験の経験を、企業でどう活かしていけるのか――。
「チームで課題をどう乗り越えたか」「自分の弱みをどう伝えるべきか」「人間関係での困難への対処法は?」といったリアルな質問に対し、専門用語を使わず平易な言葉でわかりやすく伝えるコツを紹介しています。
理系学生にありがちな「伝わりにくさ」を克服し、自分らしさと成長意欲がしっかり伝わる面接対策をしたい方におすすめの内容です.
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私は大学で化学を専攻し、有機合成反応の条件最適化や副生成物の制御について研究してきました。反応系の中でわずかに変化する温度や溶媒の影響を追いながら、「どうすれば目的物を安定して得られるか」を考えるなかで、問題解決のための観察力・粘り強さ・論理的思考を鍛えることができました。
研究では「1つの理論だけでは通用しない」という壁にも多く直面し、何度も条件を組み替え、文献と実験を往復しながら結果を積み上げてきました。この過程で培った「現場から答えを見つける姿勢」は、御社のように素材から暮らしや医療にまで事業を広げる企業で、価値を生み出す力になると考えています。
また私は、研究室で共同実験・装置管理・発表担当を務め、複数人で進める研究の中で「相手の視点で考える力」も意識してきました。現場に立つ技術者としてだけでなく、社会に必要な製品を“つくりきる”一員として、課題発見から提案・改善まで粘り強く取り組んでいきたいと思います。
質問:「最も困難だったと感じる経験や挑戦はありましたか?それをどのように乗り越えましたか?」

はい、学部4年次に取り組んだ有機合成反応の研究で、目的物がなかなか得られず、数か月間うまくいかない時期が続いたことが、最も困難な経験でした。
私は、特定の官能基を持つ中間体を合成する反応経路を担当していたのですが、文献通りの条件でも再現性が取れず、常に副生成物が大量に出る状態が続きました。最初は機器や試薬のせいだと思っていたのですが、何度やっても同じ結果で、正直、心が折れかけた時期もありました。
そこで私は考え方を一度リセットし、「文献通りにやる」のではなく、「副生成物が出るという“現実”を前提に観察しよう」と視点を変えました。分析データを1つひとつ丁寧に追い直し、時間変化や副反応経路の仮説を立てて、反応時間・pH・触媒量などを細かく再設計しました。
地道な繰り返しの結果、当初より20%以上の収率改善につながり、最終的に後工程の合成にもつながる安定条件を見出すことができました。
この経験を通じて、私は「正しい答えを探す」ことよりも、現場の結果を受け入れて考え抜く力が大事だと実感しました。御社のように、社会のニーズや課題に対して“実用的な解”を導き出す現場においても、この粘り強さと柔軟な視点は活かせると信じています。
質問:「チームで課題を解決した経験はありますか?」

はい。大学4年生のとき、研究室で同じテーマを持つ3人のメンバーと、ある化合物を大量につくるための実験を進めていたときのことです。
少量の実験ではうまくいっていたのに、たくさんつくろうとすると急に反応がうまく進まず、できる量が大きく減ってしまいました。原因がわからず、なかなかうまくいかない状態が続いていました。
私は、まずそれぞれのメンバーがどういうやり方で実験していたのか、装置や温度の設定、かき混ぜ方などを聞いてメモにまとめて比較してみました。すると、実験器具の形や混ぜ方の違いが原因かもしれないことがわかり、みんなで話し合って条件をそろえてやり直すことにしました。
その結果、反応が安定し、前よりも多くつくれるようになりました。最初に比べて、できた量は平均で15%くらい増えました。
この経験を通じて、チームの中で情報を集めたり、違いを整理したりすることが問題解決につながるということを学びました。旭化成さんのように、多くの人と一緒に製品や研究を進める会社でも、この経験を活かせると思っています。
NG例
はい。私は大学の研究室で、有機合成実験の共同プロジェクトにおいて、スケールアップ時の反応不安定化という課題をチームで解決した経験があります。
私たちはある合成ルートの条件を最適化し、グラムスケールでの生産に応用する段階に入っていました。しかし、試験管レベルでは再現できていた反応が、スケールを大きくした途端に反応速度が大きく変動し、収率が著しく低下してしまいました。
最初は原因がわからず、メンバー間でも議論がまとまりませんでしたが、私は一人ひとりの観測条件や装置の違いをヒアリングし、記録を比較・整理。すると、撹拌速度や容器形状が微妙に異なっていることに気づきました。
その後、スケール別の撹拌速度・温度プロファイルを数値化して条件を再構築。全体で情報を共有しながら再試行した結果、反応の安定性が大幅に向上し、収率も平均で15%改善しました。
この経験を通じて、私は「科学的知識」だけでなく、「現象をチームで分析し、情報を構造化して共有する力」の重要性を実感しました。御社のように、研究・生産・事業部門が密に連携する組織でも、こうした協働力を活かして貢献したいと考えています。
質問:「なぜ理学部化学科に入ったのですか?」

私は高校のときから、目に見えない世界で起きている現象にとても興味がありました。たとえば、水に何かを混ぜると色が変わったり、発熱したりする実験を見たときに、「なぜこんなことが起きるのか」をもっと深く知りたいと思いました。
中でも化学は、身のまわりの製品や生活に直結している学問だと感じたことが大きな理由です。たとえば、薬やプラスチック、電池の材料なども、化学の知識がベースになっています。「ただ反応を学ぶ」のではなく、それが社会にどう役立つのかを考えながら学びたいと思い、理学部化学科を選びました。
大学では、反応をただ覚えるのではなく、自分で条件を変えて実験し、その意味を考えるようになり、ますます面白さを感じるようになりました。将来は、学んできた知識を活かして、人の生活や社会の役に立つものを生み出したいと考えています。
質問:「なぜ他社ではなく旭化成なのですか?」

他にも化学メーカーは多くありますが、私が旭化成を志望するのは、素材だけでなく、医療や住宅など、人の生活全体に関わる広い事業フィールドを持っているからです。
大学では、研究を通じて「化学の知識をどう社会に役立てるか」を常に意識してきました。旭化成は、電池材料や不織布、医療機器、さらには住まいまで幅広く展開していて、化学が人の暮らしにどう貢献できるかを考えながら働ける環境だと感じました。
また、貴社の説明会で社員の方が、「現場の課題に向き合いながら、自分の考えで改善提案をしていくのが面白い」と話されていて、**“現場主義”や“挑戦を歓迎する文化”**にも強く惹かれました。
私は、知識を「研究室の中」だけで終わらせず、実際に形にして社会に届ける力をつけたいと思っています。その点で、旭化成の“つくる力”と“届ける力”の両方を学べる環境で働きたいと考えました.。
質問:「他の企業でもできるのでは?」

たしかに、化学の知識を活かせるメーカーは他にもありますし、研究やものづくりに関わるチャンスもあると思います。
ただ私が旭化成に強く魅力を感じたのは、研究だけで終わらず、“社会に届けるところまで一気通貫で関われる”点です。
たとえば、貴社では素材開発から製品化、さらには医療や住宅といった人の暮らしに直結する分野まで自社で展開されています。そうした中で、研究職や開発職も「最終的に誰の役に立つのか」を常に意識して仕事をしていると伺いました。
私は大学での実験を通じて、「成果を出すこと」以上に、「それがどんなふうに使われるのか」に関心を持つようになりました。そのため、“社会に役立つ形にまで自分の手で関われる”旭化成でこそ、自分のやりたいことが実現できると感じています。
質問:「あなたの弱みを教えてください」
私の弱みは、慎重になりすぎて、行動に移すまでに時間がかかるところです。
大学での実験でも、条件を変えるときに失敗を恐れて慎重に調べすぎてしまい、結果として動き出しが遅くなることがありました。特に、何かを人に共有する前に「もっと自分の中で整理しないと」と考えすぎてしまう癖がありました。
ただ、研究室での経験を通じて、途中の仮説でも仲間と共有し、意見をもらいながら進めた方が結果的に良い方向に進むことが多いと実感しました。それ以来、考える前に「まず共有してみる」ことを意識し、ミーティングで自分から発言したり、進捗を簡潔に伝えたりする習慣を身につけました。
これからも慎重さは大切にしつつ、チームの中でスピード感を持って動けるよう、行動と発信のバランスを意識して成長していきたいと考えています。
質問:「人間関係で困った経験はありますか?どのように解決されましたか?」

はい。大学の研究室で、ある共同実験を進めていたときに、一緒に作業していたメンバーと意見がすれ違い、ギクシャクしたことがありました。
私たちは実験データの解釈をめぐって違う考えを持っていたのですが、お互いに「自分が正しい」と思い込んでしまい、話し合いが平行線になってしまいました。
最初は私もつい反論してしまっていたのですが、ふと「相手の主張にはどういう背景があるんだろう」と立ち止まり、一度相手の話を聞くことに徹してみることにしました。そのうえで、「自分はこう考えたけど、ここはどう思う?」と一緒に考える形で会話を変えたことで、相手も自然に話してくれるようになりました。
結果的に、お互いの考えを組み合わせることで、データの見方も深まり、先生にも「視点の幅が広がった」と評価していただけました。
この経験から、「正しさを主張するよりも、まず相手を理解しようとする姿勢」が大切だと強く実感しました。社会に出てからも、さまざまな価値観を持つ人と協力するうえで必要な姿勢として大事にしていきたいと思います。
質問:「最後に何か聞いてみたいことはありますか?」

ありがとうございます。せっかくの機会ですので、ぜひ2点お聞きしたいことがあります。
1つ目は、若手社員の方が最初の数年間で特に成長を実感した業務や経験には、どんなものがありますか?
配属後にどのような仕事で視野が広がったのかを知り、自分のキャリアイメージに役立てたいと考えています。
2つ目は、研究や開発の現場で、“自分の提案が形になった”と感じられた瞬間には、どのようなプロセスがあったのかを、面接官のご経験から伺えれば嬉しいです。
私自身、実験だけでなく、その先にある“使う人の姿”を意識して学んできたので、実際に社会に届いたときの手応えを知りたいと思いました。
まとめ
理学部化学科で学んできたことは、数字や実験結果だけでは測れない「観察力」「論理的思考」「粘り強さ」など、社会に出てからも求められる力に満ちています。
旭化成のように、素材から医療、住宅まで多彩な領域に挑む企業では、そうした理系的な思考と、他者と協力しながら課題を解決する力が欠かせません。
本記事で紹介した面接のやりとりや考え方が、自分の経験を「わかりやすく」「前向きに」伝える助けとなれば幸いです。
大切なのは完璧な答えよりも、自分の言葉で誠実に向き合うこと。
あなたの研究と人柄が、企業にしっかりと届くことを願っています。